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先日読んだ図書館シリーズが面白かったので、有川浩の他の著作も読んでみようと思いました。しかしこの人の本は多くがハードカバーで、無職の身にはお高いものでして。
そんな中、なぜか一作だけ文庫で出ている「塩の街」。これを手始めに読んでみようと、買ったそのレジのすぐ横に、山積みになっている「塩の街」ハードカバー版! なんだこのやろう! 気付かなかった自分が憎い! …その日のうちに文庫版は読破したのですが、悔しかったので翌日すぐにハードカバー版も買ってきてしまいました。結局。
ハードカバーで再版された経緯については、あとがきに詳しいです。「…」はわたしが略した部分。
…担当さんはこの話をハードカバーで出したかったらしく、…要するに大賞を取っちゃうといろんな大人の都合で文庫にしないわけにはいかないのだそうで。…その後は何の拍子か『空の中』以降のハードカバー路線に叩き込まれたわけなんですが、…
大人の都合というか、まあ、電撃大賞受賞作なのに電撃文庫から出版されなかったら変なんだろうな。逆に、編集担当者は初めから「この作家は売れる! 売ってみせる!」と確信していた、ということでしょうか。
なお中身についても、帯にある通り、大幅改稿、番外編短編四篇を加えた
、新しいものとなっています。どこが変わったかの詳しい記述もこれまたあとがきにあります。すでに文庫版で読んだ方や、これから初めて読むけどどっちがいいんだろう?な方は、ネタバレ覚悟であとがきをチェックしてみることをおすすめします。
サクッと感想。わたしはどうも、こういうふうに現実を少しだけずらした、すこしふしぎな作品が好きらしい。前にも述べたけれど、魔法は科学を推し進めたものであるとか、シーナワールドとか。自分の想像力の及ぶ範囲内から範囲外へ広がっていく感じが楽しいのかなあ。
その特異な設定を抜きにすれば、これはただの恋愛小説だ。普通の恋愛モノには拒否反応を示すところが、どうして有川作品なら感涙してまで読めるのか。誰かを好きになったときの不安を、我がことのように読み取れる文章。説明的でないから素直に読めるんだが、これを「描写がくどい」と評する人がいるのが不思議。
ところでこれもあとがきからの引用ですが、印象に残った部分があります。文庫版で元原稿が改稿となったことについて、作者の意見が綴られています。
打ち合わせで自分の意見が全部通る訳がないということは当たり前ですので、譲れるところと譲れないところ、駆け引きで使うところは最初からある程度は考えてありました。
どれを書いてどれを書かないのか、書くとしたらどういう形で書くのか。作品が作品に仕上がるまでには、作家だけではなくいろんな人が周りに関わっている。考えてみれば当たり前なのですが、今日まで恥ずかしながら意識したことがありませんでした。
作家も商売なのだと失望したのではなく、潔いというかなんというか、わたしなどは、作品が世に出るには作家の努力一つだと考えていたので、眼から鱗が落ちた思いでした。