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有川浩「図書館戦争」(メディアワークス)を読みました。面白かった。
評判を聞いてから、あちこち検索してレビューを読んでみたりしたところ、これは図書館とその敵対勢力との戦争を描いた作品らしい。どうやら椎名誠のSFに近い雰囲気を感じる。Twitterでも書きましたが、短編集「雨がやんだら」に収録された「巣走屋本店」は、本屋さん同士の商業戦争を描いた作品。長編「アド・バード」は、広告戦争をそのものズバリの戦争として描いた作品。
当時、比喩として戦争という言葉を使っているところを、じゃあ本当に戦争として小説にしちゃおうぜ、って発想に驚いた。作品内容とは少し離れた感想だが。わたしがいかに言葉の使い方に縛られていたのかを考えさせられたりしてね。言葉遣いに過剰に敏感になのは、思えば椎名誠作品に影響されたからなのかもしれん。しかしもう発行されてから20年近く経っているんですな。
どうでもいいのですが「巣走屋本店」のタイトルが思い出せずに苦労した。この作品のタイトルが知りたい!@SF板を見ても載っていなかった、まああんまりSFらしいSFを読んだ経験があるわけでもないんだけど。
分厚くて読み応えがありそうで手に取った時点でわくわくします。あと表紙が綺麗、というかかっこいい。エンボス加工っていうのか。ハードカバーの小説を買うのは恥ずかしながらとても久し振りだったりします。だって高いから…。前述の椎名誠はそれこそ大好きでハードカバーと文庫版と両方買うぐらいだったけれど、それはもう昔の話だ。
わたしはあとがきから読む派です。誰かがどんなに薦めていても、とりあえず本屋では最初の数ページとあとがきとをパラ見してから、購入するかどうか決定します。「おもしれーっつってたのにウソじゃんよ! 裏切られた!」みたいな理不尽な怒りを覚えずに済む。誰に対して理不尽かというと、これはもうまごうことなくわたし自身が理不尽なんですわ。
というわけであとがきを確認。あとがきの文体が少々気に入らない、ちょっとはっちゃけすぎー。とりあえず「月9連ドラ風」というようなことが書かれている。ということはこれはやっぱり、ラノベに近いノリなんだろうなあ。
初めの数ページを確認。数行目でだいたいこの物語の背景が分かる。おもしろそうだ。というわけで購入決定。最初からほぼ買うつもりで心を決めて本屋に赴いているのだから、確認するのは財布に対するプレッシャーの後押し行為に過ぎないのである。
ほぼ1日かけて読了しました。読み終えたくないと思いつつ読み進めた本というのは久々かなあ。というか、本を読むこと自体が久々なのか。
しかし我が家は床生活なので重たいのがしんどかった。前半3分の1程度を喫茶店で読んだんだけど、そのまま最後まで椅子と机で読めばよかった。布団に寝っ転がって本を読むのは首と肩と腰とを傷めるのでやめましょう。
まず話が淀みなく進むのがいい。スピーディーな文体ももちろんのこと、ちょっと引っかかるような記述がされている場面でも、きちんとオチが準備されていて安心できる。例えばクマーのくだりで、「――あたしだけじゃないわよ
」という言葉が出てくるのに、では他には誰がいたのか、説明がされない。一瞬ハテナと思いつつも、そこは筆者を信じて読み進めると、もう1人は誰だったのかちゃんと書かれている。
作品全体を突き通して謎である「王子様」についても、最後の最後で安心させてくれた、ああーよかった。というかここらへんが月9連ドラ風なんだろうな。絶対にその人しか在り得んだろうと思いつつも、最後の最後まで明言されないからハラハラできる。わたしが初心なだけなんでしょうかねえ。しかしまあ、そういう些細な部分で不満を感じることなく読み終えられるのは、エンタテイメント作品では重要だと思っている。
「こうした世界には感情移入できない」とか「伏線がきちんと消化されていない」とか、そういう大まかな意味では、違和感がある人もいるのかなあ。だがわたしはそんなこと気にしねえからね。ぬるオタなので、用語を間違ってたり、設定に矛盾があったり、そういうことは気にならんのよね。物語が面白くて登場人物が面白ければ読んでしまう。極端な話、専門用語がいっぱい並んでる行は読み飛ばしちまうときもあるからね。
章タイトルと内容が一致しているのは美しい。が、ストーリーとしては散漫な印象。一般的に新入社員がどういうふうに扱われるのか、それを考えると、ちょっと波乱に満ち過ぎているというか。いくら特殊な業種だからとはいえ。でもこれは郁が感受性豊かだからなのかなあ。そして、散漫と思いつつも淀みなく読めるのは楽しいんだけれど。あと4章はいまいちだ。自分が歳を取ったからなのか、子供がメインの話は、それだけでつまらなく感じてしまう先入観。
しかし登場人物だが、主人公の郁にはいまひとつ共感できなかった。背が高く運動神経抜群で明るく素直で何事にもめげない女子、そんな完璧な人間はイヤだよ。唯一、熱血バカだってのが郁の欠点設定なのだろうけれど、現実社会じゃバカなだけでは抹殺されないんだぜ。ふと、郁の裏返しな感じで「少女ファイト」の練が思い浮かんだり。裏返し? 違うな。郁と練とは似ているなあ。
対して男性陣も非リアル、みんな立派過ぎる。というかこれは、主人公のダメさ加減を引き立てるための、郁から見た立派さなんだろうな。
ところで最も好きなのは堂上教官です。ツンデレ具合が良い。「堂上 ツンデレ」でGoogle検索したら827件HITしたよ!
閑話休題。どういうときにどう考えて、どういうときにどう感じたのか、堂上教官については丁寧に書かれている。その台詞がそこで何故出てくるのか、文学作品を読んでいて首をかしげることは多い。それは即ち読者の想像力不足だったり、そこを読み解くのが読書の楽しさだったり、ということなんだろうけれども、ラノベではそこが雑なことが多いように思う。背景が充分に書き込まれていないのに、想像で補えよと放り出されている感じ。
それについては、木尾士目の「四年生」「五年生」を思い出した。全体を理解するのに邪魔にならないバランスで、登場人物の思考が説明されている感じ。説明の手法にもいろいろあって、コマ割りであったり、台詞そのものであったり、絵柄であったり、効果線であったり。だいたい人が何を考えているのかなんて、実生活だって想像するのが困難な事柄ナンバーワンなんだ。そこを、堂上教官については、大変丁寧に描いてくれていると思う。
まあ総じてとても面白い本でした。ちょっと検索などしてみたところ、続刊の「図書館内乱」「図書館危機」はまた違う雰囲気の作品のようです。しかしまあ近日中に続刊も買ってこようと思う。