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わたくしことkanakanaが、思ったことを書き散らす場です。

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喫煙所にて

 用事を終えて帰宅の途、雨がバラバラと落ちてきたので、一時避難とショッピングセンターに飛び込んだ。ここに来るといつも喫煙所で一休みする。通路から一部屋区切られて、空気清浄器が設備されているような、普通によくある喫煙所。缶ジュース飲みながら一息つくのが、なんだかいつものコースなのである。
 向かうと、ドアが開きっ放しになっている。レールの上をスライドさせるタイプのドアだ。何かに端が引っかかっているのかな、深く考えずに後ろ手で閉めてベンチに坐ると、ドアの前で立ったままタバコを吸っていたおばさんが、即座に無表情でドアをまた開いた。

 なるほどつまり、このおばさんは、部屋が煙いのが不愉快だからドアを開けたままにしておきたいのですね。んなバカな。

 ちょっと一瞬絶句してしまった。文句言ってやろうかと思うも、声が出ない。ああいうときは何をどう言えばいいんだろう? 煙が非喫煙者に流れないために閉鎖されてる部屋なんだっていうことは、考えれば分かるよね? なのにどうしてドア開けっ放しで平気なの? キチガイなの? キチガイに注意をするのは恐いよ。
 少なくともドアが開いている間はわたしは喫わねえぞという、変なささやかな決意でごまかしてしまった。他の人も誰も何も言わないことにも、腹が立つ、自分も何も言えないんだからそこで腹を立てる資格はないんだが。

 そう考えている間に、別の人が喫煙所に入ってくる。もちろん開きっ放しのドアを、不思議に思って閉める。おばさんがまた開ける。一人が喫い終わって、出ていくときにドアを閉める。おばさんがまた開ける。みんなおばさんをチラチラ見ている。
 繰り返していると、なんとなく分かってきた。みんな多分いらだっている。おばさんにも、注意できない自分にも、みんな多分腹を立てている。喫い終わって、全員が必ずドアを閉めて出ていくのがその証拠だ。また開けられると分かっているだろうに。だが、その行動に、おばさんと自分に対する小さな批判の気持ちが含まれているから、わたしは安心できる。

 2本タバコを吸って、おばさんがようやく出ていった。自分が出るときにも開けたままだからもう笑える。部屋の空気が一斉に和んで、一番近くに坐っていたお姉さんが何食わぬ表情で立ち上がってドアを閉め、知らないおじさんが「なんのための喫煙室なんやろなあ」と言い、わたしが頷いて、隣りに坐っていたお兄さんがタバコに火を着けて、そして普通の喫煙所に戻った。
 京都にずっと馴染めずに10年も暮らしてきたけれども、何かきっかけが掴めたような気がする。気がするところで終わらせたくないと思ったので、こうして書いておく。

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